トランペットとむくみについて
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トランペットコラム
1)前置き
ラッパ吹きで、調子の善し悪しに悩んだことの無い人はおそらくいないでしょう。大事な演奏会の前には、明日もし調子が悪かったらどうしようと怯えて、なかなか寝付けないことはよくあることです。(ちなみに私は一週間前くらいから怯えはじめます(-_-: )そして、寝不足で眠い目をこすって朝早く出かけ、会場で音だしをしてみると、全く音が出ない。これもよくあると思います。
そんなときに、「なんか、マウスピースが小さく感じる」「唇が腫れぼったくて振動してくれない」と感じたことはありませんか。もしあるなら、それは軽い浮腫症状かもしれません。つまり、むくみです。女性の方で、悩んでいる方も多いかと思います。むくみ。朝起きると顔が腫れぼったく、仕事を終えて家に帰る頃には、顔はおさまったけど、今度は足がふくらんでヒールが窮屈だ。ラッパに限らずなかなか困りものです。
2)むくみとは何か
このようなむくみは、何故起こるのか。それにはまず、むくみのメカニズムを知る必要がありますです。人気番組「発掘!あるある大辞典」に『むくみ』の回がありますので、まずはこちらを御覧下さい。分かりやすくまとまっています。
簡単にまとめますと、むくみとは細胞内に余分な水分が溜まってしまった状態です。医学的な言い回しを使うと、「細胞間質に体液が過剰に貯留する状態」です。
寝ている間は体内の余剰水分が全身に散らばるので、全身に軽いむくみが出るのが普通です。そして、起きだしてしばらく3時間くらい動いていれば、自然と水分は足にあつまり、顔等のむくみは引き、足がむくみはじめるのが正常です。余分な水分は汗や尿となってどんどん体外に出て行く様に、人間の体は作られています。
なので、朝起き抜けや、起きて1~2時間くらいで、巧く楽器が吹けないのは生理的な問題なので仕方ないです。演奏会が早くからあるのなら、その日は早起きして、顔のむくみを取っておくのが良いでしょう。
3)むくみを誘発する行為
■イオンポンプ
しかし、前日にやった行動によってはなかなかむくみが取れないこともあります。まず、当然ですが水分の過剰摂取があります。飲み会の次の日に調子が悪いのはこのせいです。
実はこれには、イオンポンプという、循環系の仕組みが大きく関わっています。人間は体内で、血液から細胞に水分を取り込みますが、このときに、ナトリウムイオンとカリウムイオンが重要な役割を果たしています。両者の細胞内と細胞外でのバランスは常に一定に調整されています。しかし、何らかの要因でこのバランスが崩れると、それを戻そうとする働きが起こります。
例えば、ビールを飲むとしょっぱいものを欲しくなりますが、これはなぜなら、まず、ビールの麦芽の中に多く含まれているカリウム、それが大量に吸収されることで、血液のカリウムーナトリウムバランスを崩します。そして、バランスを戻すために、体がナトリウムを含んだしょっぱいもの(塩=塩化ナトリウム)を求めるからです。
また、ナトリウムがたくさん摂取されれば、水分もまた細胞には入り込むので、さらなる水分摂取になります。なぜなら、ナトリウムイオンは移動の際に一緒に水分を引き連れていきます。もともと、細胞内にはカリウムイオンが多く、血液内には通常ナトリウムイオンが多いです(血液1リットルあたり、Kは200mg Naは3200mg)。そのため、浸透圧の関係で細胞から血液にはカリウムイオンが移動しやすく、逆はナトリウムイオンが移動しやすい状態になっています。
人体は、Na-Kaイオンポンプという汲み出し機を使って、自然の流れとは逆に、ナトリウムを細胞外に排出する仕組みがあり、この際に余分な水分も血液中に排出されます。しかし、ナトリウムの摂取量が多いと、それはより多くのエネルギー(ATP)を必要とせざるを得ず、供給エネルギーが一緒ならば、その結果として細胞内に余分な水分が滞留する、むくみ状態となります。
また、通常は、この余分な水分は、過剰なカリウムを放出するために体が尿をたくさんだすこと(利尿作用)で放出されるのでもあるのですが、大概にして飲み会の後は、家に帰ってばたんきゅう。水分は体に溜まったままになり、結果、ナトリウムの取り過ぎとも相まって、翌日えらいむくみになります。
それほどではなくても、寝る前に水分をたくさん取ったりすると、むくみは強くなります。演奏会前日は、寝る前の飲食は控えた方が良いでしょう.夜更かしはもってのほかです。寝る前ポテチはどうしようもないです(笑)
■ダイエット
また、ダイエットによってタンパク質が不足すると、むくみやすくなります。血中アルブミンという、細胞間の水分を再吸収する役割をもっているのですが、これの材料がタンパク質だからです。肝臓で合成されるので、肝臓を悪くしているとやはり欠乏状態になります。アルブミンは、同時にビリルビンやカルシウム、プロゲステロン、各種薬物なども運んでいますので注意が必要です。
■薬剤
多くの薬が、むくみを誘発し得ます。風邪薬を飲んだら調子が悪くなったなんていうのもこのせいかもしれません。何にせよ、唇は敏感ですので困った物です。
(Kitasato Univ. Electronic Textbook:より引用)
- 非ステロイド系抗炎症剤
- インドメタシン、フェニルブタゾン、フルフェナム酸、イブプロフェン、ジクロフェナクNa、アミノピリン、ピラビタール、アセチルサリチル酸、メルロフェナメート。
- ホルモン剤副腎皮質ホルモン
- エストロジェン、テストステロン.ADH、ACTH、経口避妊薬。
- 血圧降下剤
- レセルピン、ヒドララジン、α-メチルドーバ、β-ブロッカー、ミノキシジル。
- 中枢神経系用薬
- カルバマゼビン、クロールプロマジン、オキサゼバム、バルビタール、モルヒネ、ニコチン、イニプラミン。
- 抗生剤・化学療法剤
- ストレプトマイシン、PC系薬剤、ST合剤、リンコマイシン、グリセオフルビン、サルファ剤、PAS、ピラジナミド、エタンプトール。
- 抗癌剤
- 5-FU、サイクロフォススファミド、マイトマイシン、ビンクリスチン、ダウニルビシン、ドキソルビシン。
- Na含有薬カルベニシリン
- スルベニシリン、PAS-Na、重炭酸Na、グルタミン酸Na、Naイオン交換樹脂。
- その他
- 甘草製剤甘草(リコライス)、グリチルリチン。
抗糖尿病剤(クロールプロパミド)、脂質降下剤(クロフィブレート)。
しうる物ですの、これを飲んだから必ず出る物ではありません。詳しくはお医者さんに聞いて下さい。
4)解消法
まずは、水分やナトリウムの過剰摂取はきっぱりやめましょう。そして、演奏会が終わった後で、その分ハジけましょう(放っといても大概、ラッパ吹きはハジけますが)。むくみに良い食事と言う物もあるようです。以下のリンクが参考になるかもしれません。ビタミンB1も良いそうです。
△食育大辞典【浮腫(むくみ)】頁
△Pri-Mary 顔のむくみの頁
また、一旦むくんでしまったものは、マッサージや運動で解消するのが副作用も無く、一番健康的であると思います。利尿剤等もありますが、粘膜は薬剤に結構敏感ですし、体の他の部分に影響も出ますので、ただのむくみ程度には使わない方がいいでしょう。というか、出してくれないと思いますし、医者も。基本的には、むくんでいる部分の筋肉を収縮→伸長→収縮→伸長と繰り返し、筋肉の圧力でリンパの流れを活発にします。この際に、出来るだけ圧力の変化を大きく取り、また一日に少しずつ何回もすることが大きな効果を生むそうです(△浮腫の軽減のための運動原則の頁)。
また、様々なケアの頁をあげておきます。例えば、半身浴とマッサージでむくみを取る方法もあります。顔のむくみにも応用できると思います。また、よくエステで見られるマッサージも、リンパの流れを良くしているという科学的実証もあるそうです。終わった後に顔がすっきりしているのはそのためでもあるようですね。
トランペットを吹くには、健康な体が必須条件なのかもしれませんね(^^;
しかし、どこのバンドを見ても、他のどのパートよりも不健康な気がするのは…気のせいでしょうか(笑)
以上、不健康が代名詞の管理人でした。
お値打ち情報、間違い等ありましたらお手数ですがご連絡下さい。
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